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台風第12号による紀伊半島を中心とした被害にかかる一考察


  ※  この「台風第12号による紀伊半島を中心とした被害にかかる一考察」は、書きかけ項目です。この記事に補足や情報を提供して下さる協力者を求めています


1.概要(気象庁発表の資料による)

 平成23年 8月25日 9時にマリアナ諸島の西の海上で発生した台風第12号は、発達しながらゆっくりとした速さで北上し、28日には強風半径が500キロメートルを超えて大型の台風となり、30日には中心気圧が965ヘクトパスカル、最大風速が35メートルの大型で強い台風となった。

台風は、その後もゆっくりとした速度で北上を続け、30日に小笠原諸島付近で進路を一旦西に変えた後、 9月 2日には暴風域を伴ったまま北上して四国地方に接近し、 3日10時前に高知県東部に上陸した。その後、台風はゆっくりと北上して四国地方、中国地方を縦断し、 4日未明に日本海に進んだ。

 台風が大型で、さらに台風の動きが遅かったため、長時間台風周辺の非常に湿った空気が流れ込み、西日本から北日本にかけて、山沿いを中心に広い範囲で記録的な大雨となった。
特に紀伊半島では、 8月30日17時からの総降水量は広い範囲で1000ミリを超え、奈良県上北山村にあるアメダスでは72時間雨量が1652.5ミリとこれまでの国内の観測記録である1322ミリ(宮崎県神門(みかど))を大幅に上回り、総降水量は1808.5ミリに達し、一部の地域では解析雨量で2000ミリを超えるなど、記録的な大雨となった。

このため、土砂災害、浸水、河川のはん濫等により、和歌山県、奈良県、三重県などで多数の死者、行方不明者がでたほか、北海道から四国にかけての広い範囲で床上床下浸水などの住家被害、田畑の冠水などの農林水産業への被害、鉄道の運休などの交通障害等々甚大な被害が発生した。


2.被害が発生した原因

 前記、概要に記載のとおり記録的な大雨が直接の原因であることは、雨が降っていなければ被害は発生していないはずであるから異論はない。しかしそれが全てであろうか。

 次の写真は、奈良県吉野郡十津川村大字折立の「国道168号線折立橋 」が流失した現場写真である。

 

橋が流失した翌朝の写真

 

その1日後の写真


 水位の状況を比較していただくと一目瞭然のとおり、降雨が即流れ出てきているため翌日は早くもほぼ平常の水位に戻っているのである。換言すれば山の保水能力が皆無となってきているということである。

では、どうして本来あるはずの山の保水能力が皆無となってきたのかということになるが、それは過去に国策として造林補助金などを交付して天然林から杉・桧などの人工林に転換を推進してきたものの、世界経済や住宅環境などの変遷により人工林の木材が売れなくなってきたため所有者による間伐や枝打ちなどの手入れが行き届かなくなってきて山林が荒廃したためである。

次の写真は、この橋のすぐ上流側にある荒廃人工林が同じ時に崩壊した現場である。

荒廃による人工林の崩壊現場

 今回の台風で、紀伊半島では山林の崩壊による土砂ダムが各所に出現し危険な状況となってきている。このことはテレビなどでも頻繁に放送されているので多くの方がご存じのことと思料するが、その崩壊した山林は大部分が荒廃した人工林であるということまで承知されておられる方はどのくらい居られるのだろうか?
テレビなどで著名とされている先生方の解説を見ていてもこのような問題にまで言及されている人にはお目にかかっていない。きっと机上だけでものを申されていて、現場まで足を運んだことのない人にはわからないのだろう。

放置された荒廃人工林は山間部に被害をもたらしたのみならず、およそ山林には全く関係のない遙か下流の平坦部や都市部にまで甚大な被害をもたらしている。
住民の避難や土砂ダムの水抜き・道路の復旧といったような個別の対症療法だけではなく、国による抜本的な解決策が求められているのではないだろうか。


3.解決策への提言

 今回のような被害を最小限にとどめるには、降雨があってもなるべくいっときに川水となって出てこないようにする必要がある。要するに山林に本来持っているはずの保水機能、換言すれば天然のダムを充分復元させればよいのである。
このためには、人工林は間伐などその手入れを充分行って荒廃を防ぐか若しくは伐採してブナなどの落葉広葉樹に置き換えれば保水機能が復活してくる。
特に落葉広葉樹に置き換え後はいくら放置しても毎年落ち葉が堆積していき、保水力の充分な腐葉土が年々増えて天然ダムとしての効能が増強されていくのである。

 国や地方自治体は幾ばくかの補助金を出してでも前述の方策を推進していくべきである。災害が発生した場合の道路や橋梁・田畑・農作物などの復旧費や損失などに比べても僅かな額で済むものであり、何よりも銭金に代えることができない国民の命が守られることとなるのである。


 

<災害防止に関して自然界からの警告>

ー 過去の過ちから何をも学ばぬ者は、同じ過ちを繰り返さねばならない ー

 

 


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